満足度:★★★★★★★★★☆
題名:月の立つ林で
作者:青山美智子
似ているようでまったく違う、
新しい一日を懸命に生きるあなたへ。
2021年、2022年本屋大賞2位!
『木曜日にはココアを』『お探し物は図書室まで』『赤と青とエスキース』の青山美智子、最高傑作。
───あらすじ
長年勤めた病院を辞めた元看護師、売れないながらも夢を諦めきれない芸人、娘や妻との関係の変化に寂しさを抱える二輪自動車整備士、親から離れて早く自立したいと願う女子高生、仕事が順調になるにつれ家族とのバランスに悩むアクセサリー作家――。
つまずいてばかりの日常の中、それぞれが耳にしたのはタケトリ・オキナという男性のポッドキャスト『ツキない話』だった。
月に関する語りに心を寄せながら、彼ら自身も彼らの想いも満ち欠けを繰り返し、新しくてかけがえのない毎日を紡いでいく――。
最後に仕掛けられた驚きの事実と
読後に気づく見えない繋がりが胸を打つ、
心震える傑作小説。
本屋大賞にノミネートされる前から予約をしてて、やっと読めたので感想を。
流石、青山美智子先生ですね。
ファンで好みに合うから★が多くなってしまうので、個人的な感想になりますが。
全部で5章に別れている短編物語です。
しかし、そこは青山美智子先生の得意とするところ。全て同じ時系列で繋がっております。
それも見事に。
各章の主人公の邪魔をしない程度に、他の章で出て来た登場人物が絡みます。しかも良い意味で主人公の人生をサポートして。
第1章での出来事で、彼氏にフラレて落ち込んでる友達を励ましに行く隣のオバサン。その猫を預かる事によって、間接的に主人公がオバサンを助けるのですが、結果的にその主人公がオバサンの辛い出来事によって助けられると気付きます。
語学力がわたくし低いのでわかりにくいかもしれませんが「何をするのも誰かの役に立っている」
逆に言えば「誰かの迷惑になることもある」ということ。
これは気をつけないといけませんよね。
一貫して、ポッドキャストの配信が人と人とを繋ぎます。
世の中、広い様で狭く、狭い様で広いんですよね。
大嫌いなコロナの話題はたった1行。それも変なウイルスって言うだけで、コロナの事とは明言しておりません。良きかな。
週刊誌やリアルタイムじゃあるまいし、こういう何年も何十年経っても読まれてほしい作品内容に、コロナというその時代背景のしょうもない話題で話を左右されたくありません。
オイルショックの時代に書いた作品で、トイレットペーパーが無いから彼氏の部屋に行けず結局疎遠になった。とか言われても今読んで「は?」ってなりますよね?
そんな感じで、せっかく良い作品なのにコロナを知らない世代がコロナの弊害を作品に盛り込まれても「は?」ってなりそうで。
看護師、配送員、バイク屋、女子高生、ショップ店員という登場人物。
どの章から読んでも差し支えはないけど、やっぱり第1章の看護師から読みますよね。
正直、看護師の話は冒頭から暗めの雰囲気です。
これはわたくしが前回読んだ本が、内館牧子さんの「終わった人」「すぐ死ぬんだから」を引きづっているからかもしれません笑
内館牧子さんが動なら、青山美智子さんは静。
内館牧子さんが運動部なら、青山美智子さんは文化部みたいな。
勿論、甲乙はつけれません。
しかし、読み進めるとやっぱり青山美智子さんの作品は物静かに奥深く、居心地良いなって思います。
癒し、と言えば安直ですが、作品の中に入り込みたい雰囲気なんですよね。
登場人物皆、心優しい。
頑固な人もいるけど、根は優しく素直になれないだけで、あるきっかけで心を解放出来たとか。
先月読んだ「夜に星を放つ」だと、同じく夜空とか星なんかがテーマに出ますが、結局不幸なまま報われない感じなんですよね。
暗い雰囲気でそのまま終える。
青山美智子さんのは暗く落ち込んだりしても、必ず最後には打ち解けて誤解で、雨降って地固まるのが爽快で。
どんな小説家さんも、構想で結末まで決まってる筈で書き始めるのでしょうけど。その深さが一流とそれ以外で別れるのかなと。
越えられない壁、みたいな。
原作者の癖というか、色なんだと思いますが、青山美智子さんは必ずマイナスな出来事、心境から入っても必ず最後はプラスで終わる。
これが徹底されています。
例えば、彼氏と別れた引きづってるところに仕事も上手くいかないから辞めました。明日に向かって頑張る。
これが一般的だとするならば、青山美智子さんの作品だと、もう別れそうだなってところできっかけが生まれ、気持ちの勘違いとか思い込みが晴れ、お互いの仲が修復される。気持ちを前向きにすることによって、職場のあの人の気持ちもなんとなくわかる気がして、接し方を変えると凄く良い人だった。
後味が全然違ってきますし、殆どが最初から伏線貼られて終盤に答え合わせの様に話が繋がるのが爽快なんです。
そこに、前章の登場人物も絡んでたりすると胸熱で、そこが青山美智子さんは上手なんですよ。
大抵、離婚とか退職とか、もう縁を切ってしまえって思う作品が、その決断をしたことによって更なる運気が上がれば良し。
切って終わりとかだと最悪。
切らずに向上するのが青山先生かな。
そりゃ、どれもこれもじゃないでしょうけど。
現実社会でも、辛いこと上手く行かないことは沢山あります。ありすぎます。
それでも一生懸命どうにかならなくても前に進むしかない、時間や社会は待ってくれない。そういう世の中で、誰かが誰かの為にフォローしてる、間接的な協力。それは自分にも誰かを救ってる1人なんだって気づかせてくれる。
これはわたくしの個人的か気持ちなんですが、独りが好きで、できれば人混みとか避けたいし、知人他人、とにかく独りになりたい時が多いから、極力関わりたくない。
だけど世の中全てと関わりたくない、いなくなれってわけではないんです。生きていけないし笑
こっちも関わらないから、そっちも関わらないでね。
そんな感じ。
けどワガママなもので、困った時はお互い様で助けてね。ってのがあります。
しかし、困ることはないと信じてるので、強気なんですけどね。
困って誰かに助けられて初めて気付く、みたいな。
「え? こんな人が助けてくれるの?」
そういう勘違いや思い込みで、人は自分の失敗から成長していくんだなって思います。
青山美智子先生の作品は、個人的にはあまり売れてほしくないんです笑
本屋大賞とかノミネートされないでーって。
理由は、売れすぎてドラマや映画になって、それが酷評だったりマンネリされたり、青山先生の知らない所で評価落ちたりされるのが嫌なんです。
と同時に有名になりすぎるのも嫌な気持ち。
とても優しい作品だから、このスタイルで続けて、自分だけが知ってる物凄く癒される作品。そんな独占欲というか、汚されたくないっ気持ち。厨二病なのかね?
逆に内館牧子先生はドンドン売れてもっともっと面白い作品を作って、映像化されたら観にいきたいし、酷評されても気にせず作り続けるパワーがありそうです。
出来れば老人達に言い聞かせる様な作品も作り続けてほしいとか。
青山先生のは、優しい気持ちを大切にする人たちに読み続けてほしいな。
人を傷つけるのは良くないし、知らず知らずのうちに傷付けてるかもって気付いてほしい。
そんな人が世の中に増えてきたら、今より過ごしやすい世の中になるんじゃないかって。
1番読んで欲しい層は、心が疲れてる人達。
学校や仕事、人間関係とかで疲れて限界の人は休んで良いと思う。
何をしても無気力だろうけど、誰も知らない街に行って、時間とか他人とか何も気にしないで、この本を読んでほしい。
いつかきっと、誰かが助けてくれて
誰かを助けてる自分がいるから
何もかもが上手くいかない時でも
上手くいくまで時間がかかってるだけなんだって
そう気づかせてくれる作品だと思います
amidax.hateblo.jp
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