原作:青山美智子
題名:月曜日の抹茶カフェ
ページ数:231ページ
出版社:株式会社 宝島社
発売日:2021年9月23日
満足度:★★★★★★★★★☆
───わたしたちは、知らないうちに誰かを救っている――。
川沿いを散歩する、卵焼きを作る、ココアを頼む、ネイルを落とし忘れる……。
わたしたちが起こしたなにげない出来事が繋がっていき、最後はひとりの命を救う。
小さな喫茶店「マーブル・カフェ」の一杯のココアから始まる12編の連作短編集。
読み終わった後、あなたの心も救われるやさしい物語です。
インスタフォロワー数200万人のミニチュア写真家・田中達也氏がカバーを手がけています───
ほっこりしたい人向けのおすすめ作品です。
作品を一言で表現するのは難しいし、失礼だと思いますが読んだ素直な感想としては
｢縁｣
かなと。
本作品は12章に別れてるのでショートストーリー的な感じで読み進めます。
タイトルにあるように｢抹茶カフェ｣を中心にやり取りが広がるのは、以前読んだ｢喫茶ドードー｣的な物語かと思ってました。
amidax.hateblo.jp
しかし、抹茶カフェが出てくるのは最初の章辺りでその後は場所が変わります。
当然(青山美智子さんの作品ではっって意味です笑)章によって変わる主人公。
ネコが主人公以外の章は、サイドストーリーとして広げてほしいなと思うくらい、深いというか魅力的なんですよね、どなたも。
簡単に、ってのは間違えですけど、ちょっとした悩みがあり、それを救うきっかけがひょんな縁から紐解かれる。
解決に前向きになり、糸口がわかれば簡単な悩みだったって、後からなら言える。
そんな｢重くもなく軽くもない｣いわゆる｢読みやすく深入りし易い｣とでもいいましょうか。
要は好みなんですけどね。
誰かを恨んでその他にもトラブル巻き込まれて救いようがない所にパートナーの裏切りとか、読んでて重いわって方におすすめ。
もっと複雑難解な謎が最後に解き明かされるっのを求めてる人にはおすすめできません。
基本的に、ほっこりしてほしい人に読んでほしいです。
最初に言いましたが、抹茶カフェを中心、ではなくスタートが抹茶カフェで始まり、そこに関係した人が次の主人公になり、またそこで関係した人がって感じで次の章には話の中心として描かれてます。
こうやって｢縁｣が珠々繋ぎになって最後にまた抹茶カフェに戻ってくれます。
もう戻ってくれるのは分かっているんです。
というか戻ってほしいという願望もありながら読み進め、願いを上手に叶えてくれるのが青山美智子さんの作品なんですよ。
この辺りは｢赤と青のエスキース｣が後の作品でも優秀かなと。
ホンネを言うと｢あぁ、もっと深掘りして｣って思います。
それくらいどの登場人物もフィクションなのに現実的なんですよね。
しかし、実際はフィクションなのでこんなに縁が上手に繋がらないよって思いますが、繋がるかどうかの確認をしていないだけで、実際は繋がるはずですよね。
作中でもあったのですが、とある2人が出会う為にはって過去を遡ると、学校のクラス分けやそれに至る先生の移動、先生が先生を目指すきっかけになった出来事。
もっと言うなればその学校を作る事に一役買った人の親の出会いとか、天文学的数字の確率を辿ると今の2人が出会うってこと。
勿論、違うルートを辿っても出会いはあったでしょう。
もしかしたら憎しみ合う仲として出会うかも？
その可能性も否定はできません。
全ての縁を意識して今現在を生きていくのは困難だし、目の前の事を片付けなければなりません。
しかし、ちょっとした事で｢ラッキー｣とか｢助かった｣時に、それが誰かが手を差し伸べてくれたのなら？
ちょっと違う例えになるかもしれませんが、わたくしは実際に献血に行きました。
輸血した血は無駄にならないように誰かの役に立っております。
その方が全て善人とは限りませんが、いつか縁があって救われた命が回り回って自分に手を差し伸べてくれるかもしれません。
その為の血液の貯金って考えはおかしいですが、出来る範囲の事をすれば遠くの誰かに役に立つ。
その事実が自分の生きてる証拠というか意味というか。
作中ではそんな事を考えず、本屋の店主と客って感じの関係だったりしますが、それでもその出会いがなければ考え方1つとっても気付きが無かったりします。
自分や相手に対しての｢気付き｣
簡単なようでこれが｢いつ｣気付くかによって人生も左右されたりしますよね。
若者だと特に大事です。
今の彼女と付き合ってる時に気付くのか、結婚してから気付くのか、女友達が彼氏を作る前に気付くのか？
どれもタイミングを逃したら、その後の人生が変わり、取り返すのには膨大なエネルギーを消費しますよね。
ほんのちょっと早かったら、ってのに気付くのも後々になってから。
これも全て｢縁｣なんですよね。
ブログを見てくださるのも縁。
大切にしたいですね。
